ホテル業界の動向



第15回 「景観法」によって日本の街並みは再生されるか…

2004.05.06

「景観法」で街並みはどれだけ美しくなるか…

 現在わが国の街並みは「都市計画法」「建築基準法」「屋外広告物法」によって規制されていますが、国土交通省は"欧米に比べ汚いといわれる日本の街並みをきれいにしよう"と今年2月新たに「景観法」という法案を通常国会に提出しました。早ければ今年6月に成立し、年内には施行される見通しだという。

 政府が現在進めている「グローバル観光戦略」の一環として制定されるこの景観法、施行されると「景観地区」に指定された地域内では、街並み保全のため建築は届出ならびに勧告による規制が行われ、建築物や工作物については形態や意匠などが制限されます。
 また野放し状態の野外広告物を規制するため、規制の対象を広げこれまで対象外だったベニヤ板や広告旗などの屋外広告物を強制撤去出来るようになります。それに伴い屋外広告業は届出制から登録制に変更されますので、いい加減な看板業者を排除できるかもしれません。

 さらにこの法律を財務省が予算と税制で後押しします。財務省は「景観法」の制定に際し「景観形成事業推進費」として200億円の予算を付け、さらに「景観重要物の相続税」については所得税、法人税の特別控除として1500万円を認めるという。
 財政難の中で認められたこの200億円、伝統的な街並みの整備や河川・公園の整備に使われるということですが、ぜひ有効に使って欲しいと思います。

法律で守る「シンガポール」の美しい街並み…

 国家の存亡をかけて町の美化に取り組んだ国があります。その国とは東京都の3分の1ほど(23区内)の国土(680k㎡)に416万人の国民が住むシンガポールです。シンガポールは現在「国民一人当りの国民総生産(GDP)」では日本、香港に次いでアジア第3位という経済規模を誇るとともに、アジア有数の観光大国としても知られていますが、建国当初は大変貧しい国でした。

 シンガポール観光の魅力といえば何といっても緑豊かな美しい街並みですが、その美しさは1967年に始まる「ガーデンシティ政策」など政府の観光振興政策によって造りだされたものなのです。
 外国人観光客誘致こそが富国への道であるとしたシンガポール政府は、観光振興政策を支えるための法整備も進め、「Environmental Public Health Act」(環境および公衆衛生に関する規制)や「Parks and Trees Act」(公園および樹木法)という都市景観を保全するための法律を制定しました。

 法律で公園の整備や利用について定め、建設会社等の事業者に対しては景観保全のための規制を設け、さらには樹木や植物の所有者に対してはその保護を義務付け、国土を緑の大地に変えるべく国を挙げて取り組んだのです。


煙草のポイ捨ては高くつきます…

 例えば公園等の公共の場所において、煙草の吸殻等のゴミを捨てたり植物の採取等をすると最高5,000Sドル(32万円)の罰金が科せられるし、車から公共の場所にゴミを捨てたり、ゴミを捨てるために車を使用したら大変なことになります。
 最悪の場合その車は没収されてしまうし、何と50,000Sドル(320万円)以下の罰金または12ヶ月以下の懲役です。さらに悪質な場合はその両方が科せられ、同様の前科があると100,000Sドル(640万円)以下の罰金と12ヶ月以下の懲役となります。
 公共の場所での駐車違反も厳しく、公園等は駐車禁止ですので違反すると、あっと驚くその罰金は最高5,000Sドル(32万円)です。

自分が所有する木でも切れません…

 それから樹木保全地区内では、自分の土地にある樹木や植物であっても、幹の太さが1mを超える木を勝手に切ったりすることは禁止されているし、手入れも適切に行うよう義務付けられています。これらに違反した場合は、最高10,000Sドル(64万円)の罰金です。

 また新しく建物を建築する場合には、道路沿いに2m程度の緑地帯を設けることなどが条件付けられ、違反すると最高10,000Sドル(64万円)の罰金が科せられます。さらに是正措置を行わない場合には、1日毎に100Sドルの罰金というかなり手厳しいものです。

 このように国民に様々な規制を強いる一方、政府自らも徹底した樹木の管理を行っています。管理対象の街路樹等の樹木については毎年現場に出向き1本1本点検したうえ、コンピュータを使い植樹の時期や樹齢、さらには病歴などを管理するという徹底振りです。
 「景観法」を制定し、遅ればせながら"街並みをきれいにしよう"と取り組み始めた日本ですが、参考にすべき点があるようです。

次回は、日本の街並みをきれいにする「電線類の地中化」…についてご紹介します。

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